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微分積分学の第二基本定理の導出

微分積分学の第二基本定理を導きます。

微分積分学の第二基本定理
 \int_{a}^{b}f(x)dx=F(b)-F(a)

 

(1)ある区間でつねに  f’(x)=0 ならば, f(x)=c \quad (cは定数)

その区間内に 2 x_1<x_2 をとると,平均値の定理*1により

 f(x_2)=f(x_1)+f’(c)(x_2-x_1) ( x_1<c<x_2)

仮定により  f’(c)=0

よって  f(x_2)=f(x_1)

ここで  x_1, x_2 は任意なので  f(x)は定数 (証明終わり)

 

(2)ある区間でつねに  f’(x)=g’(x) ならば, f(x)-g(x)=c ( cは定数)

証明は定理(1)を  f(x)-g(x) に適用する

 

(3)関数  f(x) に対して  F’(x)=f(x) をみたす関数  F(x) f(x) の原始関数という。

 F(x) f(x) 1つの原始関数とすると, f(x) のすべての原始関数は次の形で表される:

 F(x)+C \quad (Cは任意定数)

証明  f(x) の任意の原始関数を  G(x) とすると, G’(x)=F’(x)=f(x) であるから(2)より

 G(x)-F(x)=C

 G(x)=F(x)+C

逆に, Cが定数ならば  F(x)+C   f(x) の原始関数 (証明終わり)

 

(4)積分平均値の定理

関数  f(x) 区間  [a, b] で連続ならば,

 \int_{a}^{b}f(x)dx=f(c)(b−a)  (a<c<b)

をみたす  cが存在

証明 区間  [a, b ]における  f(x) の最大値を  M, 最小値を  m とすると, [a, b ]で  m ≦ f(x) ≦ M

積分の基本性質より

 m(b−a) ≦ \int_{a}^{b}f(x)dx ≦ M(b−a)

 m ≦ \frac{1}{b−a}\int_{a}^{b}f(x)dx ≦ M

中間値の定理*2により,

 f(c)=\frac{1}{b−a}\int_{a}^{b}f(x)dx \quad (a<c<b)

をみたす  c が存在する。 (証明終わり)

 

(5) f(x) が a を含む区間で連続ならば,その区間内で  x の関数  \int_{a}^{x}f(t)dt微分可能であって,

 \frac{d}{dx}\int_{a}^{x}f(t)dt=f(x)

証明  F(x)=\frac{d}{dx}\int_{a}^{x}f(t)dt とおくと

積分の基本性質より

 \frac{F(x+h)-F(x)}{h}=\frac{1}{h}(\int_{a}^{x+h}f(t)dt - \int_{a}^{x}f(t)dt)\\=\frac{1}{h}\int_{x}^{x+h}f(t)dt

ところで(4)の積分平均値の定理より,次式をみたす cが存在する:

 \int_{x}^{x+h}f(t)dt=f(c)h \quad (x<c<x+h)

以上より

 \frac{F(x+h)-F(x)}{h}=f(c)

 h→0 のとき  c→x であり  f(x) は連続だから

 f(c)→f(x)

ゆえに  F’(x)=f(x) (証明終わり)

 

(6) a, b を含む区間で連続な関数  f(x)  1つの原始関数を  F(x)とすれば,

 \int_{a}^{b}f(x)dx=F(b)-F(a)

証明 (4)より  \int_{a}^{b}f(x)dx f(x) の原始関数で(3)より

 \int_{a}^{b}f(x)dx=F(x)+C ( Cは定数)

 x=a を代入すると C=−F(a)

 \int_{a}^{x}f(x)dx=F(x)-F(a)

 \int_{a}^{b}f(x)dx=F(b)-F(a) (証明終わり)

 

以下のサイトには裳華房微分積分の教科書の一覧が載っています。

微分積分 主要教科書一覧

 

参考文献

石原繁. 浅野重初. 理工系入門 微分積分学裳華房. 2021

*1:証明はロルの定理を用いる。ロルの定理の証明は最大値・最小値の定理を用いる。田島一郎『解析入門』が分かりやすいです。

*2:証明は区間縮小法の原理を用いる。数学オリンピック対策関連の本には載っています。