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管路内の粘性を認める流体のエネルギーの損失

管路内の実在流体(粘性応力を生じさせる流体)に対するエネルギー保存則: 

 \frac{a(v_1)^2}{2g}+\frac{p_1}{ρg}+z_1=\frac{a(v_2)^2}{2g}+\frac{p_2}{ρg}+z_2+h_i

上式における断面間のエネルギー損失水頭 h_iを学習しました。今回、下付き文字が、該当する用語の英語表記に即することが多い内容のため英語表記も記します。

 

摩擦損失(friction loss) ダルシー・ワイスバッハの式(経験則)

形状が変わらない管路においてせん断応力による仕事に費やされ熱エネルギーへと変換される力学的エネルギー

管路が円管の場合

 h_f=f\frac{L}{d}\frac{v^2}{2g}

 f: 摩擦損失係数,  d: 管径,  L: 摩擦が起きる区間の長さ

 

 fの求め方

・層流の場合

 f=\frac{64}{Re}

(導出可能)

・乱流の場合

流速分布の厳密な理論解がないため経験則により与えられる。

Moody図表( Reと相対粗度( \frac{壁面粗度}{管径})から fを求める図)などを使って求める。

f:id:thinqueen:20221111170433p:image

図1 Moody図表

 

形状損失(local lossもしくはform loss)

形状が変わることでエネルギーの変換が起きるのはなぜか: 管形状が変化するとき、流線が管壁から剥離し渦領域を生成したり、二次流という主流と直交する副次的な流れが生成したりする。それらの形成にエネルギーが使用され、粘性によりエネルギーが熱エネルギーと変換される。

 h_i=K_i\frac{v^2}{2g}

 K_i: 形状損失係数

 

a 急拡(sudden expansion)

管径が急激に拡大する場合

 h_{se}=K_{se}\frac{(v_1)^2}{2g}

ただし K_{se}=(1-\frac{A_1}{A_2})^2

(管路流れの基礎方程式から導出可能)

 v_1: 細管内の流体の速度

 

b 急縮(sudden contraction)

管径が急激に縮小する場合

 h_{sc}=K_{sc}\frac{(v_2)^2}{2g}

 v_2: 細管内の流体の速度

 

c 漸拡(gradual expansion)

管路が緩やかに広がる場合

漸拡損失係数 K_{ge}を用いて急拡損失を補正するような形で定式化される

 h_{ge}=K_{ge}K_{se}\frac{(v_1)^2}{2g}

 

d 漸縮(gradual contraction)

管路が緩やかに狭まる場合

はく離が抑えられエネルギー損失が生じない

 

e 流入(entrance)

十分大きな貯水池やタンクから管路に流体が流入する場合

流入損失係数 K_eを用いる。値は流入部の形状による。壁面に直に管路が接続される場合は、急縮損失において A_1 \to \inftyとすると K_e=0.5

 

f 流出(exit)

管路流れが十分大きな貯水池に流出する場合

流入と区別するため K_0を用いることが多い。急拡損失において A_2 \to \inftyとすると K_0=1

 

g 曲がり

 h_b=K_{b1}K_{b2}\frac{(v1)^2}{2g}

ただし、 K_{b1}=0.131+0.1632(\frac{d}{γ})^{\frac{7}{2}},  K_{b2}=(\frac{θ}{90})^{\frac{1}{2}}

 γ: 曲がり部の曲率半径,  d: 管径,  θ: 曲がり角(度)

 

h その他

その他のエネルギー損失は『水理公式集』に載っているとのこと

 

流体の粘性を認めた場合、管路の各所でエネルギー損失を考えることができ、より実際に即して流体を捉えることができる点で学習し甲斐がある内容だと思いました。

 

二瓶康雄. 宮本仁志. 横山勝英. 仲吉信人. 土木の基礎固め 水理学. KS理工学専門書. 2020