北野映画のすすめ
1 はじめに
このエントリは,北野映画(北野武監督の映画)*1のファンである自分が,北野映画をまだ見たことがない,1作か2作なら見る機会があったけど他の作品は見たことがないといった方々に対しておすすめの北野映画を紹介するものです。各作品の紹介文において映画の具体的なストーリーの内容にまでは触れていないので,安心してお読みください。なお,全作についてDVDもBlu-ray Discもあるようです。
2 北野映画の特徴
まず,北野映画は,暴力的な作品が多いものの,実は恋愛とか青春が主題の作品から時代劇まで幅広くあります。そして,これら北野映画同士では,ジャンルが違っていても共通性を見出すことができ,「北野映画」という1つのジャンルがあるように感じられます。共通点は以下の通りです。 *2
A 登場人物の表情,動作,物体や風景の色,音といった,言葉では表現しにくいものが良いと感じます。映像で何かを伝える映画として素晴らしいということです。
B お涙頂戴のシーンが少なく素直に楽しめます。つまり典型的な感動的なシーンで視聴者の涙を誘ってやろうというような意図がありません。
後は,Wikipedia のたけしさんのページにキタノブルーのことだとか,色々書かれてあります。ただし,Wikipedia の各作品のページには,作品によっては話の内容が事細かに書かれてあるので全編をご覧になる前は避けていただくのがよいと思います。
3 北野映画の各作品紹介
北野映画の中でも見応えがあると思ういくつかの作品を上映された順に沿って紹介します。各作品の公開日,上映時間,映倫区分は北野武:プロフィール・作品情報・最新ニュース - 映画.comで調べました。
a その男、凶暴につき
1989年8月12日公開/103分
たけしさんの初監督作品です。北野映画ではたけしさん自身が出演されることが多くて,この映画では主人公の凶暴な刑事役を演じられています。たけしさんの他,白竜さんが殺し屋役,川上麻衣子さんがたけしさんの役の妹役,佐野史郎さんが警察署の署長役として出演されています。この映画は結末が特に良いと感じます。あくまで自分の考えですが,初めに見る北野映画としてはおすすめではありません。*3
b 3-4X 10 月
1990年9月15日公開/96分
たけしさん,柳憂怜さん,石田ゆり子さん,ガダルカナル・タカさん,ダンカンさん,渡嘉敷勝男さん等が出演されている映画で,BGMが一切流れないというのが特徴です。*4主人公の雅樹は草野球チームに所属するガソリンスタンドの店員です。個人的にこの作品か後述の『ソナチネ』が北野映画の中で最高傑作だと思っています。白昼夢の中にいるような感覚を味わうことができる上,ストーリーの構成に魅力を感じます。
c あの夏、いちばん静かな海。
1991年10月19日公開/101分
真木蔵人さんと大島弘子さんによって演じられた,ろうあの男女の恋模様が描かれた映画であり,台詞の数が極端に少なく静かな映画です。清掃員の助手である主人公の茂はサーフボードを拾ったことをきっかけにサーフィンを始めます。音楽監督は久石譲さんです。この映画は静かなため途中までは退屈だったのですが,独特なエンディングに魅力を感じます。
d ソナチネ
1993年6月5日公開/94分
たけしさん,国舞亜矢さん,大杉漣さん,寺島進さん等が出演されていて,『3-4x 10月』同様,沖縄が舞台の映画です。自分の認識では,一貫した加減のない暴力,一瞬一瞬の表情,一つ一つの台詞に魅力を感じる奥深い映画だと思います。この作品をご覧になる場合は3回以上ご覧になるのがおすすめです。
e キッズ・リターン
1996年7月27日公開/108分
金子賢さんと安藤政信さんによって演じられた不良の2人をメインとして,複数の青年たちが織り成す青春映画です。2人はある出来事をきっかけにボクシングジムに入ります。ストーリーが面白く,展開も速く,非常に面白い映画です。そして,映像が醸し出す90年代の雰囲気に引き込まれます。初めに見る北野映画としてもおすすめです。*5
f HANA-BI
1998年1月24日公開/103分
たけしさんが刑事役,岸本加世子さんがその妻役を演じられた映画です。大杉漣さん,寺島進さん,芦川誠さん等も刑事役として出演されています。この映画は,自分にはお涙頂戴のように感じてしまうのですが,ヴェネチア国際映画祭でLeone d'Oro(金獅子賞)に輝いた作品だそうです。*6タクシーを塗装してパトカーにするシーンは面白いです。
g 菊次郎の夏
1999年6月5日公開/121分
東京の下町で祖母と二人暮らしをする少年が,たけしさんが演じられたチンピラ中年と共に愛知県豊橋市まで母親を探しに行くロードムービーです。北野映画としては珍しく暴力が少なめの映画です。道中で会うすべての脇役に味があり,地味でありながら感動するシーンが多く,初めに見る北野映画としておすすめです。
h BROTHER
2001年1月27日公開/114分
イギリスと共同で制作されたロサンゼルスを舞台とする映画です。たけしさん,『あの夏、いちばん静かな海。』以来の真木蔵人さん,アメリカのOmar Eppsさん,『キッズ・リターン』以来の石橋凌さん,北野映画でお馴染みの大杉漣さん,寺島進さん等が出演されています。舞台が海外であることが活かされた台詞が面白く,良いシーンがたくさんある必見の映画だと感じます。
i Dolls
2002年10月12日公開/113分
3組の無関係な男女のやり取りが描かれた映画です。北野映画としては珍しく,菅野美穂さん,西島秀俊さん,深田恭子さん等,現代の若年層にもなじみのありそうな役者の方々が出演されています。自分はこの映画のストーリーが心から好きです。また,他の北野映画にも言えることですが,予告編を見るだけでも涙が出そうになります。*7
j 座頭市
2003年9月6日公開/115 分/R15+
ヴェネチア国際映画祭における銀獅子賞受賞作の時代劇らしいです。たけしさんは盲目の剣客・市の役を演じられています。この他,浅野忠信さんが服部源之助という名の浪人役,北野映画でお馴染みの大家由祐子さんが芸者姉妹の姉役を演じられています。あくまで自分の考えですが,初めに見る北野映画としてはおすすめではありません。
k アウトレイジシリーズ
2010年6月12日公開/109分/R15+,2012年10月6日公開/112分/R15+,2017年10月7日公開/104分/R15+
あくまで自分の考えですが,この3作はそれまでの北野映画からすると異色であり,初めに見る北野映画としてはおすすめではありません。もちろん映画としては面白いので他の北野映画を何作かご覧になった後にご覧になるとよいと思います。1作目のキャストは,たけしさん,椎名桔平さん,加瀬亮さん,三浦友和さん等です。個人的に2作目のストーリーの展開が面白かったです。
*1:たけしさんが出演されていても,監督がたけしさんでない映画は含みません。たけしさんに関連する作品の一覧が気になった方は,北野武:プロフィール・作品情報・最新ニュース - 映画.com をご覧ください。
*2:ちなみに,自分は『青〜chong〜』という2001年に公開された,たけしさんが監督ではない邦画も好きなのですが,この映画にも北野映画らしさがあると感じます。北野映画に魅せられた方はこの映画も好きかもしれません。
*3:この作品は,全編をご覧になる前はYouTubeにアップされている予告編を避けていただくのが良いと思います。
*4:予告編ではBGMが流れますが,本編では流れません。
*5:この作品は,全編をご覧になる前は YouTubeにアップされている予告編を避けていただくのが良いと思います。
*6:ヴェネチア国際映画祭は,カンヌ国際映画祭,ベルリン国際映画祭と並ぶ三大映画祭の1つで,1932年に始まった世界最古の歴史をもつ映画祭だそうです。映画祭が開かれるのは,ヴェネチア本島の沖合に浮かぶ細長い島・リドという所らしいです。(世界最古の映画の祭典、ベネチア国際映画祭について覚えておきたいコト)
*7:ロシアでは2年以上もロングラン上映されたらしいです。(北野武がモスクワ映画祭で特別功労賞「ロシアの受け止め方が楽しみ」 | ORICON NEWS)